2020年2月8日、京都競馬場に虹がかかった。
グリーンチャンネルの画面越しに、輝かしい未来を予感した。
その数十分前、エルフィンSで1頭の牝馬が圧倒的なパフォーマンスを披露したゴールの瞬間、私は
「桜花賞馬だ!」
と両手を挙げて叫んでいた。
デアリングタクトが、ベールを脱いだ瞬間である。
しかし、現実はそうそう甘くはなかった。
例年なら桜花賞の出走ボーダーをクリアしていると思われたが、まさかの除外危機。
トライアルレースが消化され出走権がほぼ約束されたところで、新型コロナウイルスによる開催危機。
「なんで今年に限って...」
そんな思いが、桜花賞当日まで何度も頭の中を過ぎった。
その後の活躍は、語るまでもない。
史上初、無敗の3冠牝馬の誕生をかけた秋華賞で、前日オッズが1.1倍になろうとも驚かない。
競馬に、絶対は無い。
圧倒的1番人気が敗れることも少なくないが、終わってみればそれ程強くない過剰人気だったケースが殆どだ。
2020年、10月18日、秋華賞。
どんな結末が待っていようとも、
デアリングタクトが弱い馬だったということだけは、
絶対に、無い。