【ジャパンC】デアリングタクトよ、ザルカヴァになれ
菊花賞。
本命のバビットの手応えが早々に怪しくなり、コントレイルの楽勝だと思った。
しかし現実は、条件戦を勝ち上がったばかりのアリストテレスに最後の最後まで苦しめられた辛勝。レース後のダメージは、稀代の名馬として生を受けてから初めての経験だったであろう。ジャパンCでは、ただでさえ3歳牝馬よりも1週間短いリフレッシュ間隔なのだから、予想ファクターとして重要視すべきだ。
さて、過去20年遡っても前走で条件戦を勝ち上がって菊花賞を制した馬は2頭のみで、いずれもダンスインザダーク産駒だ。ダンス産駒は菊花賞には滅法強いが春の天皇賞の成績はサッパリで、その要因の一つとして成長曲線が3歳秋にピークを迎えやすいといった傾向が推測される。
正直なところ、菊花賞で驚いたのはコントレイルの勝負根性ではない。
エピファネイア産駒の底力だ。
血統的裏付けが必要な条件下における好走は、逆説的にこの新種牡馬の評価が担保されたと言ってもいい。
「3歳秋、距離延長のエピファネイア」
こんな格言が本物となる舞台が明日、ジャパンCで整いつつある。
いや、整い過ぎたといってもいい。
クロノジェネシスが一番怖かった。
秋の天皇賞からジャパンCを連勝するのは難しく、過去20年遡っても1頭しかいない。その唯一であるゼンノロブロイは父サンデーサイレンスに加えて母内にも連勝血統であるニールガウ(1/4)を備え、秋の古馬3冠をグランドスラムした。
早々にジャパンC参戦を表明した無敗の3冠牝馬の前に立ち塞がるのは、天皇賞・秋を勝った馬ではなく、ステップとして使った馬だろうと踏んでいたのだ。
12年前、フランスで6戦無敗の3冠牝馬が誕生した。
もっとも、現地では牝馬3冠という呼称は特にないらしい。
そのザルカヴァは7戦目で迎えた凱旋門賞、勝負所で歴戦の猛者たちによる壮絶な体当たりをも払いのけ、1着をもぎとったのだ。
どんな境遇も、本物には言い訳にならない。
2020年、ジャパンカップ。
日本競馬史上に輝く大決戦で、
デアリングタクトよ、ザルカヴァになれ。