【生産牧場必見】繁殖牝馬の父として優秀な種牡馬の選び方
競走成績の優れた牝馬が、母親として繁殖成績に優れるとは限らない。
2008年の天皇賞秋で歴史的な大接戦を演じたウオッカとダイワスカーレットの子供たちが、下級条件でしのぎを削りあっているような光景もこの世界では珍しくない。
それを考えれば、今週末に組まれている札幌記念を牡馬相手に勝ちきったエアグルーヴ、ヘヴンリーロマンス、フサイチパンドラの繁殖成績は素晴らしい。
逆に競走成績こそ優れないが名馬の母となった牝馬が数知れないのがこのブラッド・スポーツの面白いところだ。
2014年の、これも札幌記念を勝った牝馬ハープスターを産んだ繁殖牝馬がまさにそうだ。
ヒストリックスター
父ファルブラヴ(1998)
母ベガ
母ベガは周知のように競走成績も繁殖成績も特別に優れた名馬だが、ヒストリックスターはこのベガの残した唯一の牝馬である。
しかし、父ファルブラヴの種牡馬成績は(結果論だが)イマイチで、当馬も未出走で繁殖入りした。何故この名牝ベガにファルブラヴが種付けされたのかを推測すれば、サンデーサイレンスの亡き後、その直仔にあたるポスト・サンデーサイレンスとなるべき種牡馬の花嫁としての需要を考慮したのだろう。
そして、それは見事に実を結んだ。
ヒストリックスターにはサンデーサイレンスの最強後継馬であるディープインパクト が種付けされ、桜花賞馬のハープスターが誕生したのだ。
もちろん、これはいくつかの幸運と、遺伝という神の匙加減としかいう他ないいくつもの偶然の重なった結果だろうが、「血統ウェーヴ」理論で見たファルブラヴという種牡馬には、母父として優れる(必然的な)要素が備わっていたのだ。
ノーザンテースト(1971)
フレンチデピュティ(1992)
マルゼンスキー(1974)
カーリアン(1980)
トニービン(1983)
サクラバクシンオー(1989)
ファルブラヴ(1998)
競馬ファンならば、これらの種牡馬がブルードメアサイアーとして優秀なことはご存知だろう。例えば、種牡馬御三家と言われたサンデーサイレンス、トニービン、ブライアンズタイムの3頭はそれぞれオークス馬を3頭、3頭、2頭と輩出しているが、引退後に母としてG1勝馬を産んだのは前出のベガとエアグルーヴのみでいずれもトニービン産駒だ。母父サンデーサイレンスの活躍馬が目立つのはこれは総じて良血馬が多いことに由来していて、母父としてはトニービンの方が優秀だという評価は揺るがない。では、上記の7頭に共通する要素は何か。ここからが「血統ウェーヴ」のミステリー性の真髄だ。
実は上記の7頭の種牡馬の生まれた年(西暦)は、全て3で割り切れるのである。要するに、誕生年が3年周期で全て重なるのだ。更に、この7頭の父親の誕生年にも注目してみよう。
ノーザンダンサー(1961)
デピュティミニスター(1979)
ニジンスキー(1967)
ニジンスキー(1967)
カンパラ(1976)
サクラユタカオー(1982)
フェアリーキング(1982)
実はこの7頭の誕生年は、全て3で割ると2余る周期で重なっているのである。
さて長くなってしまったのでそろそろ結論を書こう。ディープインパクト亡き今こそ、将来のポスト・ディープインパクト となるべき種牡馬の、優秀な花嫁となる血統馬をより多く残すべきなのではないか。「血統ウェーヴ」から導かれた、繁殖牝馬の父として今後注目されるであろう種牡馬はこの馬たちだ。